SDGsビジネスに取り組む企業の皆様へ

企業活動に対するSDGsの浸透は、ここ数年で益々高まっており、皆様の会社のおかれましても、おそらくはトップダウンで、「SDGsの本業への取り込み」が中長期的な指針のひとつとして現場に降りてきているのではないでしょうか。

社内のSDGs推進主体は、これまではCSR部門であったのが、最近ではそれが全ての事業部門にまたがり、担当業務のなかにSDGs推進が求められてきているようです(参考:SDGs日本企業調査レポート2019年度版 「ESG時代におけるSDGsとビジネス~日本における企業・団体の取組み現場から~」)。

しかしながら、ある程度の規模の企業ですと、社員の方は決まった部署で特定の領域を任されており、基本的にはその延長でデザインするしかなく、担当業務によっては時間的余裕がなかったり、それが好調の間は敢えて新しいものに手を出すインセンティブもわきません。

また、個人的な要素だけでなく、SDGsビジネスを検討するにあたり、組織的構造、人事評価制度、社内風土、など様々な外部要因が妨げとなることもあるかと思います。例えば、単年での個人目標の設定・実績評価のなかでは、新規事業へはなかなか時間を割けないでしょうし、また、部門間連携もカルチャーによっては容易ではないはずです(参考:関西SDGsプラットフォーム【SDGsに係る関西地域出の取り組み状況調査報告書】)。

新規事業の企画を社内であげるにあたっても、決済者(層)の数によってはとても大変ですし、企画の内容も説得力があるものではないといけません。説得力のある事業案を用意するには、現地の状況などについてある程度のリサーチが必要で、それにはそれなりの時間と労力を要します。

当ブログでは、SDGsビジネスの構築をめざす企業担当者の方に向けて、事業アイデアのヒントとなり得る情報を発信することを目的としています。

SDGsビジネスとは

SDGsビジネスとは、つまり、社会課題の解決に資する事業です。社会課題は国内外の両方に存在します。国内では多くの自治体、特に地方自治体が、様々な社会課題を抱えながらその対策を迫られており、その解決のために民間企業との連携を模索しています。

SDGsの前身であるMDGsでは、その対象は開発途上国でした。先進国である日本の国内より、途上国により多くの社会課題があることは言うまでもありません。国際協力機構(JICA)は、途上国での社会課題解決に資するSDGsビジネスを支援しています。(参考:JICA 中小企業・SDGsビジネス支援事業

気候変動や環境問題において、その原因は先進国であるにもかかわらず、より深刻に影響を受けているのは開発途上国です。そのような地球規模の問題を生み出した側として、我々が開発途上国の社会課題に取り組むべきである、という考えのもと、このブログでは海外(途上国)の社会課題を扱いたいと思います。

社会課題の捉え方

SDGsビジネスに取り組む際には、自社の既存の製品・技術を、単品で提供できる市場(社会課題)を探すことが多いと思います。そうすると、社会課題も単体で捉えられることになると思いますが、実際は異なる複数の課題が複雑に絡み合っています。社会課題を適切に理解するには、それらを複合的に組み合わせて新しいものとして捉えなおすか(新結合)、よりマクロな視点でとらえ(例えば、農業セクター全体)、不足している技術を整理する必要があるはずです。その結果、シーズ側も必然的に、単品での解決は不可能となり、複数のプレーヤーが協同で取り組まなくてはなりません。

 

例えば、ベトナムの海洋プラスチックの問題を考えたときに、廃棄物管理を単体の課題を捉えて、ある企業が自社の廃プラスチックの処理技術を導入したいとします。しかしながら、海洋プラスチックの問題は、発生段階の課題(発生量の増加、低い収集率、市民の意識)から、リサイクル段階まで関連する社会課題は複数存在し、それら全てを把握したうえで、相互作用するものは特定し、同時に解決を試みる必要があります(参考:社会課題/廃棄物 ベトナムの海洋プラスチック)。

当ブログでは、社会課題を一つずつ単体で紹介するのではなく、マクロ的かつ複合的な視点から、どの部分に課題があり、どのような技術が求められているかをできるだけ明らかにすることを目指します。

トレードオフの解消
どのような事業でも、無理やり何かしらの社会課題と結びつけることは可能です。そこで忘れてはいけないのがトレードオフの発想です。つまり、ある事業が何かしらの価値を社会にもたらす一方で、別の社会課題を引き起こしているかもしれない、という点を忘れてはいけません。SDGsには17のゴールがありますが、例えば、ゴール2(飢餓をゼロに)を達成するための食品工場から排出される、未処理の産業排水によって、周囲の公共水域が汚染されることで、ゴール6(安全な水とトイレを世界中に)が脅かされるかもしれません。

望ましいアプローチとは

上記のことから、SDGsビジネスというのは、社会課題を起点に(マーケットイン)考えるべきであると考えます。しかし、SDGsビジネスの主役である企業としては、自社の製品・技術の提供という命題がある以上、シーズを起点に(プロダクトアウト)考えざるを得ないと思います。

昨今、SDGsビジネス創出を目的とした、ニーズとシーズとのマッチング・プラットフォームが各種団体・行政機関によって提供されています。ものによっては、数千件の登録がされているものもあります。各自治体や政府機関から社会課題に関する情報が公開され、企業は自社製品・技術の情報を同じプラットフォームへ登録することで、双方にマッチングを促す、というのは一見、理にかなった仕組みと思えます。

しかしながら、そういった組織・団体から発信される情報は、社会課題について、その実情や原因について触れるにとどまり、ビジネスによる解決策を考えるには不十分だと感じます。

当ブログでは、企業の方が、シーズ起点でSDGsビジネスを考えやすいよう、社会課題の紹介では、どの部分にどのような技術が求められているかを明らかにできればと考えています。その結果として、SDGsビジネス創出のためのマッチング・プラットフォームのような役割を果たせればと思います。