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企業が海外進出をするために必要な事前準備

SDGsビジネスを展開するにあたって、対象国における市場ポテンシャル(社会課題)が大まかに確認できると、次は現地の状況を詳しく把握するために基礎調査の実施を検討されるかと思います。

しかし、もし今回初めて海外での事業に挑戦される企業にとっては、いくつか事前準備が必要です。

実際、多くの企業がSDGsビジネスに挑戦するなか、事前の準備不足に関することを理由に断念されるケースが少なくありません(参考:JICA 「中小企業・SDGsビジネス支援事業」とは)。ある程度中長期的視点をもち、時間をかけながら準備を進めて頂きたいところです。

本稿では、海外ビジネスを展開するにあたり必要な事前準備をいくつか紹介したいと思います。

1.動機と目的

海外でのビジネス展開に着手するにあたっての事前準備としてはまず、海外進出をする理由と目的を明確化することが必要です。

海外進出自体が目的ではなく、企業の戦略に沿って中長期的な目標を達成することを考えたときに、国内だけでなく海外進出が必要と判断される場合に限り着手することが望ましい形です。

但し、当ブログを閲覧頂いている方は既にそのステップはクリアされていると思います。

2.社内の体制

次に必要なのが、社内の体制づくりです。

海外ビジネスに新たに取り組む場合、必要な時間と労力は膨大で、既存の仕事を掛け持ちながら実行することは難しく、また社員が個人業績を考えたときにはどうしても既存の仕事への時間・労力の配分が大きくなり、新規ビジネスへの取組に後手になりがちです。会社として本気で海外ビジネスに取り組む場合は、専任の部署を設置したり、担当者を任命したりすることが望ましいと考えられます。

また、海外事業への取組については会社のトップから、社内に対してしっかりと周知を図る必要があります。国内ビジネスが主軸の中小企業では、一部の社員のみが関わる海外ビジネス(=新しいコト)への取組は受け入れられにくいことが多いです。事業実施には、他部署(営業、製造、管理部門)の協力が不可欠であるため、会社のトップは海外ビジネスへの取組を企業戦略に落とし込み、継続的に全社に働きかける必要があります。

その他、社内体制について形式的な準備としては、英文での組織名や役職の決定、名刺での英文表記、ホームページの英文ページ、などがあります。

3.語学力

次に現地側との円滑なコミュニケーションを可能にするための準備が必要です。海外ビジネスでは、文化や商習慣が異なる現地のパートナー企業や顧客と意思疎通を図ることが求められます。

方法としては、通訳を配置するか(国・プロジェクト毎)、自社の担当者が英語もしくは進出先の言語を習得するかのどちらかかと思います。前者の方が即効性がありますが、やはり自社のリソースで言語スキルを習得するべきだと思います。

通訳者も業界に精通していたとしてもパフォーマンスの質にばらつきがありますし、都度行われる翻訳が正確かどうかの検証もできず、互いに誤った理解・認識をもったまま商談などが進んでしまうリスクがあります。異なる文化・環境にいるビジネスパートナーと新たに関係を構築するには、相手からの信用を得る必要がありますが、自分の言葉で意思を伝えたほうがその場合効果的であることは明白です。通訳を傭上するほうが一見手っ取り早いようですが、相手との関係構築に係る時間までを考慮すると、自社の担当者に言語スキルを学ばせるほうがリスクもなくより効率的ではないでしょうか。

しかしながら英語で仕事をした経験がない方にとっては、これから英語を勉強しビジネスで通用するレベルまで向上させることは大変困難であると思われがちです。しかし、著者も海外ビジネスに従事し始めたころの英語スキルは決して満足いくものではなく、勉強しながら業務をこなしている状況でした。

当時勉強は主にオンライン英会話によるものでした。

1日15~30分で予約・キャンセルも柔軟に対応してもらえるので、会社からの帰宅途中にカフェなどで受講していました。ビジネス英会話を含め目的別にコースを自由に選択でき、受講当日のテーマも自分から提案できましたので、その日実際にあった客先とのやりとりなどを題材に、スピーキングの添削をしてもらい、それをまた日々の業務で実践するということを繰り返すことでとても効率的に上達したと思います。

ここにおすすめのオンライン英会話を一つ紹介します。Bizmatesはビジネス特化型の英会話で、講師は全てビジネスの経験があるネイティブ講師でとても優秀です。一度、無料体験レッスンを受講されてみては如何でしょうか。

4.海外進出に関する情報

その次に、海外ビジネスの展開方法、進出形態に従って、必要な情報を収集します。

海外でのビジネス展開を図るうえで一般的には、リスク低減のために、駐在事務所・支店・現法など現地拠点を設立するまでに、輸出入によって既存顧客の獲得やサプライチェーンの構築を図ることが多いと思います。輸出入に関しては以下の貿易関連の情報を入手・整理する必要があります。

  • 貿易管理制度
  • 関税制度
  • 為替管理制度
  • 輸出入手続

また、現地拠点を設立する場合は、以下のような投資関連の法規制や手続きについて、対象国の情報を集める必要があります。

  • 外資に関する規制
  • 外資に関する奨励
  • 税制
  • 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用
  • 土地取得に関する規制
  • 外国企業の会社設立手続き・必要書類

これらの情報は、JETROのウェブサイトで国毎に情報が提供されています(参考:ベトナム編)。とてもよくまとまっており、また情報の更新も適切にされているので、こちらを参考にされるのが良いと思います。

5.外部人材の協力

海外でも特に開発途上国でのビジネス展開には、様々な知識・経験を必要とします。自社のリソースのみで取り組むよりも、その国や市場によって最適な外部人材の協力をえることが効果的です。

前述のJICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業への応募をめざし、外部人材として開発途上国の社会課題やビジネス環境に詳しいコンサルタントとのマッチングの機会が提供されていますので、一度ご相談されてみるのも良いかと思います。 (参考:民間企業とコンサルタント等とのマッチング相談窓口

グローバル人材として、現地人を雇用することも一案です。言語はもちろん現地の文化や社会に精通していることから、ビジネスを展開するうえで重要な役割を果たすことができます。現地人材の獲得には様々なルート・方法がありますが、ABEイニシアティブや特定技能制度を活用する企業も増えてきています。(参考:産業人材育成x人手不足解消|特定技能制度|ベトナム

海外ビジネスを展開するうえで、上記のプロセスが全ての企業に当てはまるわけではありませんが、現在の状況を振り返りまだ対応できていない準備項目があれば是非参考にしていただき取組を進めて頂ければと思います。

投稿者

naginishi@gmail.com
開発コンサルタントとして、途上国の産業開発分野の案件に従事。前職での海外ビジネス経験を活かして、SDGsビジネスの創出に取り組む。